中小企業は日本国内に数多く存在していますが、そのなかで人材育成に悩んでいる企業は少なくありません。
人材育成が不十分だと企業の存続にも大きく関わってくるので大変重要な項目になります。
では、中小企業における人材育成の課題や解決すべきポイントなどについて、皆さんが知りたい疑問を徹底解説していきます。
〈目次〉
1.中小企業の人材育成の現状
2.中小企業が抱える人材育成の5つの課題
3.中小企業が人材育成を行うための施策
4.中小企業で人材育成を解決させる5つのコツ
1.中小企業の人材育成の現状
人材育成は、企業や事業の中核を担う人材を育て、社員の成長によって生産性を向上させたり、優秀な人材の流出を防ぐ目的など、企業が継続的に成長し続けていくために欠かせないものです。
しかし、その取り組みやノウハウの量において、大手企業と中小企業では差があるのも事実です。
では、実際に中小企業における人材育成の実態はどうなのでしょうか?
①人材育成を行なっていない企業は多い
中小企業の人材育成の現状として挙げられるものとして、人材育成の必要性を感じながらも、実際に人材育成は特にしていない中小企業は半数以上とも言われていることです。
そもそも育成プログラムがないという企業も多いので、良くも悪くも少数精鋭で個人の知識やスキルに頼った組織になっていることが多いのが中小企業です。
そのため研修などの社員教育に割く予算や労力が少なかったり、人材育成をどう行なえばいいかわからないので先延ばしにしていたりといった理由で、なかなか取り組めずにいることが多いのも現状です。
②転職市場の活性化で人材育成の重要性が高まっている
高齢化社会と言われている日本では、少子高齢化が進むことで労働人口が減少し、慢性的な人員不足が進んでいます。
加えて、昨今の働き方改革や労働者の価値観の多様化などによって転職市場も活性化しており、人材の流動性も高まるばかりなのも現状です。
特に若年層においては一つの企業に定年まで勤め上げる考え方が薄れ、転職が珍しいことではなくなりました。
大手企業に比べて中小企業では、採用が難しくなっているばかりか、中途採用の社員も育成しなければならず、より人材育成の重要性が高まっているのです。
2.中小企業が抱える人材育成の5つの課題
中小企業が抱えがちな人材育成の課題について、5つ解説します。
①人材育成のノウハウが少ない
中小企業が抱える人材育成の課題として、ノウハウの少なさがあります。
例えば、これまで社員個人の経験やスキルに頼った組織だったために、そもそも育成をしてこなかった場合人材をどう育てていくかのノウハウがない事例で考えてみます。
実際に入社してすぐに上長や先輩社員によるOJTで業務を教えている場合が多いのではないでしょうか?
OJTは実務を行ないながら教えていく方法ですが、教える側の経験値やスキル、伝え方によって偏りが出てしまうことも。マンツーマンで丁寧に教えたとしても、必ずしも知識やスキルがしっかり継承されるとは限らないのです。
②育成担当者や指導者がいない
大手企業では育成担当の部署が設置されていて、研修や社員教育を行なっている場合が多いですが、一方で中小企業には、そもそも育成に携わる人員がいないことが少なくありません。
仮に経験豊富で優秀な指導者が現れたとしても、そのスキルやノウハウを社内に浸透させ、一般化させるのは簡単ではありません。
指導するための時間やコストがかかりますし、成果を実感するまでにはさらに時間がかかるでしょう。
だからこそ継続的に育成し続けることが大事なのですが、余裕が持てない状態の中で育成の実行はなかなか難しいのです。
③教育する時間が確保できない
少数精鋭で人員に余裕がない中で事業を運営している場合、社員一人ひとりの裁量が広いがために多忙を極めていることもあるでしょう。
そのため通常の業務とは別に、きちんと教える時間や教育を受ける時間をしっかり確保できていないことが多いです。
当然ながら、目の前の業務をこなすことが優先されてしまうので、研修や教育は後回しにしがちなのも事実です。
せっかく育成プログラムやカリキュラムを作ったとしても、それを充分に活かすことができなければ、育成に対してより前向きになれなくなってしまいます。
④予算が確保できない
育成プログラムを作ったりそれを活用するには、それなりにコストがかかります。
中小企業では育成のためだけに使うコストを捻出できないことも多く、経済的に余裕のある企業でない限り予算が充当されない場合も多いです。
無理をしてまで育成にコストをかけるにはリスクがありますし、どの企業も経営難には陥りたくない企業も多いでしょう。
なるべくコストをかけずに教育する方法を取ろうとすると、必然的にOJTで教える体制になることが多いのです。
⑤人材の移り変わりが激しい
採用してもすぐに辞めてしまう離職率の高い企業は、人材育成に注力できない環境になってしまいます。
実際に、新人がなかなか定着しないと悩んでいる中小企業は少なくありません。
せっかく育成してもその後すぐ退職されてしまうと、育てた時間やかかったコストが無駄になってしまいますし、社員の入れ替えが多ければその分先輩社員や教育担当負担も増えていきます。
そのため、どうせ丁寧に育成しても…という傾向になりがちなのも課題です。
社員が定着しなければ、そもそも育成の知識やスキルも蓄積できず、育成するのは難しくなってしまうのも悩ましい問題なのです。
3.中小企業が人材育成を行うための施策
中小企業が人材育成を行うための施策について、どのように人材育成をしていくか、その施策について解説します。
①採用段階から人材育成を意識する
採用段階から人材育成を意識することで、企業の方針や人材のビジョンを意識した採用活動で従業員のミスマッチを防ぐことができます。
このような人材育成を意識した採用活動を怠ると、ミスマッチによる早期離職や企業の生産性の低下につながるリスクが高くなります。
企業側も従業員側も成長できるような環境を作るためには、現在掲げている方針や人材の理想像をあらためて確認してみましょう。
②入社して数年の人材を指導者にする
指導者にはベテランだけではなく、入社して数年経過している若手人材にも任せている企業もあります。
若手人材を指導者にするメリットとして、企業に新鮮な刺激が入りやすいことや過去に指導された経験を活かしやすいことです。
ベテランが先導してしまうと将来の人材育成を阻んでしまう可能性もあります。
若手指導者のサポートをしてノウハウを継承させるように進めていくといいでしょう。
③人材開発の民間機関を利用する
人材育成が滞ってしまった場合、民間機関を利用するのも1つの手でしょう。
コストは必要ですが、効率の良い教育が可能な上に企業側の時間もとられないことがメリットです。
企業内での育成では足りない場合は探してみてもいいかもしれません。
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4.中小企業で人材育成を解決させる5つのコツ
中小企業では人材育成を行なうための環境が揃わないことが大きな課題なのも現状です。
そうした環境の中で人材育成を行なうには、中小企業ならではの工夫が大事になってきます。
では、中小企業における人材育成で成功させるコツについて、5つ解説します。
①育成テーマを明確にする
中小企業で人材育成を成功させるコツとして、育成テーマを明確にする必要があります。
人材育成は、企業の中核を担う人材を育てるために行うものですので、業態・職種によって細かい業務内容は異なりますが、人材育成のテーマはさほど大きく変わりません。
人材育成の方針を決める際は、具体的な目標を明確にすることが重要です。
目標があればモチベーションも上がり、自身の成長のために努力するようになります。
ただし、この時注意すべきことは、ただ高い数値目標だけでは「ノルマを課されている」と受け取られてしまい、結果的に人材育成にはつながらないこともしばしばあります。
目標は企業が理想とする目標だけではなく、個々の現時点での能力を踏まえた上で高すぎない目標=頑張れば実現できる目標を設定することが大事です。
②中小企業ならではの強み活かす
中小企業ならではの強み活かすことも重要です。
大手企業には安定性や知名度、収入などといった諸条件で強みを持っていますが、中小企業には大手企業には無い強みがあります。
具体的には下記のような強みが考えられます。
・経営層と従業員の距離が近い
・従業員同士のコミュニケーションが取りやすい
・従業員それぞれが担う役割が明確で把握しやすい
・少人数だからこそ施策や取り組みの効果が短期間で表れやすい
・一人ひとりの成長やスキルアップが業績にすぐ直結しやすい
このように、自社の強みを活かした人材育成を行なうことで、しっかり成果の出る育成方法が見えてきます。
③OJTのメリット・デメリットを知る
多くの中小企業で行なっている教育方法は、業務をOJT(On-The-Job Training)で教える形です。
OJTは実務をこなしながら人材育成ができ、時間やコストを抑えられたり、個人の能力に合わせて教えられたり、期間中に現場での人間関係が築けたりといったメリットがあります。
でもその一方で、教える側の実務に充てる時間が減り、業務が滞りがちになってしまうデメリットもあります。
また、教える側の能力によって成長にバラつきが出る、教わる側が業務の全体像を把握しにくいデメリットもあるので、OJTに依存しすぎないようにする注意が必要です。
OJTに頼るのであれば教える側の実務が滞ることのないよう、周囲のサポート体制を厚くしたり、期間限定で一部業務を剥がしたりするなど配慮した環境をつくると良いでしょう。
④社員が自発的に行動する環境を作る
育成担当や指導者がいなかったり、教える時間がたっぷり取れないといった中小企業では、基本的に従業員の自主性が重視されます。
だからこそ、自発的に学び成長できるよう意欲的に業務に取り組める環境づくりが大事です。
具体的には、社員が自ら分からないことを聞きに行く・調べる・学ぶといった行動を促し、それをしっかり周囲が対応する体制づくりが必要です。
もちろん上長や先輩社員の協力が必須となるため、会社としてサポートやフォローする意識を統一させましょう。
また、そうした環境下では上司の明確な指示やコミュニケーションで良好な関係を築くことが大事になってくるので、部下とのコミュニケーションのノウハウがない場合は教育する必要もあります。
⑤「見える化」を徹底的に意識する
下記4つの「見える化」に取り組むのは大変おすすめです。
これは、OJTのデメリットを補う意味でも役に立ちます。
・理想とする人材像
自社が理想とする人材像を明確にする。人材をどう育てるか、何を目指すべきかが見え、育成の方向性を定められる。
・従業員の現状のスキル
各人材が現時点で身につけている知識・スキルを明確にして把握する。そうすることで、育成計画が立てやすくなる。
・教育方針・育成手法
業務マニュアルや育成の流れ・プログラムなどを作ることで、会社全体で育成ノウハウを共有できるようになる。
・進捗状況
育成対象の社員の変化を定期的に確認。振り返る際の指標を明確にすると、新たな課題や改善策を発見できる。
これらの見える化項目を熟知して行動すると、良い方向性に向かえるイメージができそうですね。
まとめ
この記事では、中小企業の人材育成について、「中小企業の人材育成の現状」「中小企業が抱える人材育成の5つの課題」「中小企業が人材育成を行うための施策」「中小企業で人材育成を成功させる5つのコツ」の観点から、徹底解説しました。
中小企業の人材育成の課題をしっかり把握して、中小企業びしかない強みを存分に取り入れながら成功のプロセスを歩んでいく必要があることがわかりました。
中小企業の人材育成が少しでも良い方向に向かっていくことを祈っています。