事業承継について考え始めた時、一体誰に相談すればいいのか迷っている経営者は多いことでしょう。
事業継承は難しく複雑で、失敗しないようにきちんと知識を身に着けておく必要があります。
この記事では、そんな事業継承の相談先について、皆さんが気になる情報をわかりやすく解説してまとめていきます。
〈目次〉
1.事業継承の実情と経営者の悩み
2.事業承継は誰に相談すべき?
3.事業承継をする際に注意すべき3つのこと
4.事業承継の相談先の上手な見抜き方
1.事業継承の実情と経営者の悩み
事業継承の実情について、経済産業省の「2017年版中小企業白書」によると、親族外承継の割合は33.4%にものぼり、事業承継の1つの選択肢として一般的になりつつあることがわかります。
また、後継者候補がいない会社のうち、33.3%は「事業を継続するためならM&Aを行ってもいい」と考えていることが、調査で明らかになっています。
一方、後継者の選定を始めてから了承を得るまでにかかった時間は、1年以内が20.5%、3年以内が42.4%、3年超が37.1%となっているのが読み取れるので、このデータからも、体力にも精神的に余裕があるうちから、事業承継を検討し始めることが大切と言っても過言ではありません。
また、親族内承継であれば、早いうちから自社株式の最適な移転方法を検討したり、後継者の資金力を確保したりすることができるが、親族外承継では対策できていないケースが少なくないのも現状です。
こういった問題をしかるべき専門家に相談してクリアしていくことで、事業承継の悩みは少しずつ解消されることでしょう。
そして、会社経営に関しては長い経験を持つ経営者でも、事業承継の経験はない人がほとんどです。
初めての事業承継に不安を抱くのは当然の心理ですし、事業承継に関する経営者の悩みには、以下のような悩みがあります。
・どのような方法で事業承継をすれば良いのか?
・具体的にどのように事業承継を進めていけばいいのか?
・事業承継において、会社の評価額はどのくらいになるのか?
・事業承継で注意すべき点は何なのか?
・事業承継の相談先にはどんな選択肢があるのか?
・事業承継の専門家をどうやって見極めるべきなのか?
こういった悩みを心の内に秘めておくだけでは、進展は望めないので、最も適切な相談先に問い合わせて、早めに事業承継の準備に取り掛かることが大切になるのです。
2.事業承継は誰に相談すべき?
事業承継って一体誰に相談すれば良いのかわからない…
そう思っている方も多いと思います。
実際中小企業の経営者の引退する平均年齢が高齢化しており、その原因の一つとして相談先がわからない経営者が多くいるのも事実です。
このまま事業承継が進まないと全国の中小企業は今後10年間で約半数が存続の危機を迎えているとも言われています。
では、事業承継の相談先は一体どのようなところがあるのでしょうか?
①顧問税理士
事業承継について一番多い相談先は顧問税理士になります。
経営者にとって身近な存在である上に会社の内情を一番理解しているため、意思疎通が図りやすいためです。
しかし、顧問税理士といっても事業承継について専門的な知識を持っているとは限らないので、顧問税理士が事業承継に詳しくない場合は、事業承継専門のコンサルティング会社や公的機関などに相談するのがおすすめです。
顧問税理士が事業承継に詳しくなかったために、事業承継の検討をやめてしまう経営者が多くいるのが現状なので、いかに身近な存在であるかが重要になります。
②取引先の金融機関
取引先の金融機関は普段から顔を合わせているため、事業承継の相談をしやすいのが特徴です。
また、事業承継を進めるにあたり一度は声をかける存在でもありますし、最近は事業承継に力を入れている金融機関が多いため、適切な対応や提携している専門家を紹介してくれる金融機関が多くなっています。
ただし、担当者によっては融資を前提とした事業承継を進められたりする場合もあるため注意が必要になります。
③商工会議所
商工会議所も事業承継の相談先として適切です。
商工会議所は経営者向けのさまざまなサポートを実施しているため、会員は事業承継に詳しい専門家に無料で相談をすることができます。
専門家に相談すれば、様々な質問もできるので問題解決に向かえそうですね。
④事業承継専門のコンサルティング会社
事業承継専門のコンサルティング会社に相談するのも最適です。
事業承継は国の課題であるため、事業承継を専門にしているコンサルティング会社は多く存在します。
事業承継に詳しい専門家が集結している場合が多く、様々な視点から提案を受けることができます。
⑤事業引継ぎ支援センター
事業引継ぎ支援センターや事業引継ぎ相談窓口は、中小企業庁から委託を受けて実施している公的機関になります。
事業引継ぎ相談窓口は全国47都道府県の各認定支援機関に設置されており、事業承継に関する情報提供や助言を受けられます。
また、事業引継ぎ支援センターは、事業引継ぎ相談窓口と同様の公的機関になり、現在は北海道、宮城県、東京都、静岡県、愛知県、大阪府、福岡県の7か所に設置しているので、より専門的に事業承継のアドバイスを受けることができます。
⑥税理士・公認会計士・弁護士・司法書士・行政書士などの士業
事業承継は専門的な内容になるので、専門職である税理士・公認会計士・弁護士・司法書士・行政書士などの士業の方にお任せするのも良いです。
事業承継を積極的に取り扱っている士業の方は多くいます。
ただし、分野に偏りがある場合が多いため、各士業と連携をしているか確認をした方が良いでしょう。
⑦M&Aのコンサルティング会社・仲介業者
M&Aにより承継させる場合の相談先にM&Aコンサルティング会社や仲介業者があります。
M&Aは豊富な実績や経験が必要になる場合が多いため、M&Aの専門会社に相談するとスムーズに進めることができます。
また、各士業と連携している場合が多いため、いろいろな相談に対応してもらえる特徴があります。
このように、事業承継の相談先は多岐に渡って存在するので、最も自分に合った相談先を選択する必要があるのです。
また、事業承継の相談先としては、FYSがおすすめです!
人材育成のプロであるFYSなら、事業承継の進め方に対して、具体的にどのような手順を踏めば成功できるのか、解決することができます。
事業承継、次期幹部育成、管理職育成、部下育成でお悩みの方はぜひ一度相談してみるのをおすすめします!
3.事業承継をする際に注意すべき3つのこと
事業承継の相談先はあっても、相談する際には注意しておきたいこともあります。
では、事業承継をする際に注意すべき3つのことを解説します。
①事業承継のプロはほぼいない
事業継承についても詳しそうな公認会計士や税理士は、決算や税務申告についてはプロと言えますが、必ずしも数字に関して精通しているわけではありません。
顧問の公認会計士や税理士は、会社における取引の仕訳や決算書の作成、税務申告などを行ってくれる立場ではあるが、事業承継に関わる業務は全くの別物ですので、プロとしての仕事をできる訳ではないのが注意点です。
顧問の公認会計士や税理士が誠実な人柄であれば、事業承継についての相談をした際に、事例の調査や自分よりも詳しい専門家を推挙してくれると思いますが、そういった期待感を持てる場合は、最初の相談先としては確かに適切です。
あるいは、顧問の公認会計士や税理士が、事業承継を専門とするコンサルティング会社やM&A仲介会社と太いパイプを持っていることも少なくないので、紹介を受けることで、特別な対応を期待できるケースもあるのです。
士業の専門家でも、事業承継のプロではない事に注意する必要性があるのです。
②無責任なアドバイスに気を付ける
事業継承について無責任なアドバイスにも注意が必要です。
小さな会計事務所だと、事業承継に関するノウハウを持っていないケースも多く、世代交代によって会計事務所を変更されることを恐れて、「事業承継の検討はもう少し後でも大丈夫」といった無責任なアドバイスをされることがあるのも事実です。
アドバイスに従った結果、事業承継のタイミングが遅れて売却先が一向に決まらないといった事態に陥ってしまったとしても、それは経営者の判断の結果であり、責任は自らにあります。
事業承継は経営者にとって最後に大仕事でもあり、自らの責任の基に完遂させる必要があります。
顧問の公認会計士や税理士が、事業承継の相談相手として適切かどうかの判断も、経営者自らが判断しなければならないので、注意が必要なのです。
③情報を正確に伝える
公認会計士や税理士の能力や人柄を見極めた上で、事業承継の相談をすると決めたなら、できるだけ正直に情報を伝えることが大切です。
事業承継は、相続の問題とも密接に関わってくるので、公認会計士や税理士であれば、そのことを重々承知しているため、家族関係や個人資産について質問を受けることも多いと思います。
答えたくないことまで無理に答える必要はないが、質問された内容については、できるだけ正直に答えることを推奨します。
いくら能力の高い公認会計士や税理士でも、情報が足りなければ適切なアドバイスはできないので、情報を伝えなかったがために、誤った選択をしてしまうことがないように最大限の注意が必要です。
4.事業承継の相談先の上手な見抜き方
事業承継の相談先の見極め方について解説します。
①事業承継の実績を確認する
まず最初に、事業継承やM&Aの実績を確認することから始めましょう。
事業承継においては、さまざまな予測できない事態が発生することがある為、そんな時に臨機応変に対応できるかどうかは、実績によるところが大きいのも事実です。
経営者の最後の大仕事ともいわれる事業承継を成功させるためにも、実績豊富な相談先を選ぶようにしましょう。
実績については、会社としての支援実績などを数値で確認する他、具体例を質問することで見えてきます。
「過去に事業承継を支援する中で、発生したトラブルは?」「従業員にはどんな説明をすればいいのか?」といったことを掘り下げて質問することで、相談先機関や担当者の支援実績を知ることができます。
②専門家との連携状況を確認する
事業承継には、法務的・税務的リスクが多数存在するため、専門家の存在は欠かせません。
必要に応じて専門家に相談できる体制なのか、契約書等はしっかり専門家が確認する体制をとっているのか、デューデリジェンスでは専門家はどこまで関わってくれるのか、事前にチェックしておきましょう。
専門家と連携していると言っていたとしても、実際にはすぐに相談できる環境にはない場合もあるため、注意が必要です。
③担当者との相性を確認する
M&Aが成功するか否かは、担当者との相性も大きく関わってきます。
売却側の事業内容をよく理解し、心情に寄り添ってくれる担当者なら、自社と相性のいい売却候補先を探し出してくれる可能性が高くなります。
担当者の経験や人柄はしっかり確認しておくべき項目ですので、コミュニケーション能力や対応力など、「この人になら任せられる」と思える相性のいい担当者を、根気よく探すことが大切になるのです。
まとめ
この記事では、事業継承の相談について、「事業継承の実情と経営者の悩み」「事業承継は誰に相談すべき?」「事業承継をする際に注意すべき3つのこと」「事業承継の相談先の上手な見抜き方」の観点からわかりやすく解説しました。
事業継承は難しく、失敗はできないとても大事なことなので、注意点をきちんと攻略した上で実践する必要があるとわかりました。
事業継承に成功して、会社が良い方向に進んでいくことを祈っています。