中小企業や個人事業主にとって、会社や事業が存続していくためには事業承継の実現が必要不可欠なのも事実です。
しかし、事業承継は難しく、実際どのように事業承継をすれば成功できるのかわからない方も多いと思います。
この記事では、そんな事業承継について皆さんが知りたい疑問をわかりやすく解説していきます。
〈目次〉
1.事業承継とは?
2.事業承継と事業継承の違い
3.中小企業の事業承継の現状
4.事業承継の種類
5.事業承継で失敗しない為に取るべき5つの行動
1.事業承継とは?
事業承継とは、一般的に事業の運営や会社の経営を後継者に引き渡し、それを継がせることです。
多くは、会社の株式である経営権を後継者に譲渡譲渡することで、会社を丸ごと引き渡します。
個人事業主の場合は事業譲渡による引き渡しといいます。
それ以外にも、会社組織は現経営者の手元に残し、事業と関連する資産を引き渡すケースである事業譲渡や、事業が複数あり後継者も複数いる場合、各事業を個別にそれぞれの後継者に事業承継するケースもあります。
いずれにしろ、経営者が引退するときに会社や事業を継続させるためには、必ず必要不可欠なプロセスが事業承継です。
そんな事業承継の定義とは、完璧な定義自体はありませんが、事業承継とは大別して3種類のカテゴリーに分かれるものを総合的に引き継ぐことで成立していると分析しています。
その3種類とは、会社の経営権、資金や資産、経営理念などの知的資産です。
大切なことは、後継者にとって事業承継とは、単に社長という肩書が手に入るだけではありません。
重い責任を負う現実を理解し、その覚悟が求められるということです。
2.事業承継と事業継承の違い
事業承継と類似する言葉として、事業継承があります。
漢字も見た感じ似ていて混同しがちですよね?
同じ漢字が上下逆になると、そこにはどんな意味の違いが生じるのでしょうか。
事業承継をよりよく理解するためにも、事業継承との違いについて確認しておきましょう。
「承継」と「継承」は、完全に意味の違う言葉などではなく、相互に類語として分類されています。
事業継承も見かけますが、一般的には事業承継の方が正しい使い方です。
「承継」という言葉は、継承よりも法律用語として適切な表現と考えられています。
「承継」は、権利や義務を引き継ぐことをさす法律用語です。
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)」「事業承継税制」など、条文や契約書でも「承継」の表記が多用されているからです。
前任者から法律上の手続きを経て事業を引き継ぐことからも、事業承継の方が正しいといえます。
ただし、事業継承が間違いというわけではなく、理念などよりも資産や税金対策に集中する場合は、あえて事業継承という場合もあるのがややこしい部分です。
3.中小企業の事業承継の現状
では、中小企業の事業承継の現状とは一体どのようなものなのでしょうか?
2020年3月31日に中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン~第三者への円滑な事業引継ぎに向けて~」には、中小企業の後継者の現状について、以下のような記載があります。
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-2.pdf
日本全体において、令和7年(2025年)までに、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人、うち約半数の約127万人が後継者未定と見込まれているようです。
つまり、これから5年以内に経営者がリタイアする可能性のある企業のうち、約半数は後継者が決まっていないということなのです。
後継者が決まっていない中小企業が、このまま何の対策も講じなければ、廃業を選択せざるを得なくなりますが、もし仮に上述した127万の企業が廃業に追い込まれてしまった場合、雇用喪失や連鎖倒産を招き、日本社会全体に大きな影響を与えかねません。
このように、日本は現在、いわゆる大廃業時代を迎えているため、中小企業における事業承継は喫緊の社会課題となっており、円滑な事業承継の実現が今後の日本経済の行方に大きく左右すると言っても過言ではないのです。
中小企業の事業承継の現状は悩ましい問題や課題がたくさんあるのです。
4.事業承継の種類
事業承継の種類としては、基本的に以下の3つがあります。
①親族内承継
1つ目は、子息等に承継する親族内承継です。
相続などの観点からも、最も望ましいのが子息等の親族への事業承継です。
20年以上前であれば、この子息等の親族への承継が事業承継全体の9割以上を占めていましたが、既にお伝えした中小企業の後継者の現状からもわかるとおり、後継者不足によって親族への承継は減っており、現在は、全体の6割を切っています。
後継者不足の主な理由としては、高校を卒業したら大学に進学するというのが一般的になった結果、親が会社を経営していても、子息は大学卒業後に大手企業に就職したり、医師や弁護士、公認会計士といった専門職に就くなど、後を継ぐことを前提としない人生を歩むケースが増加したことが挙げられるでしょう。
経営者である親が子息に継いでもらう前提でいたとしても、親の苦労を近くで見てきたことなどから、子息本人には全くその気がないというのはよくある話です。
②親族外承継
2つ目は、自社役員・社員に承継する親族外承継です。
子息等の親族への事業承継ができない場合、次に候補として挙がるのが自社役員・社員への承継です。
しかし、これは主に資金の面で、かなり困難な選択肢となる場合が多いです。
というのも、黒字企業で無借金経営などの場合、譲渡価格が高額となるため、後継者にとって購入代金の調達が難しくなります。
一方、借入金の大きな企業の場合、譲渡価格は比較的低く抑えられますが、借入の連帯保証や担保提供で不足が生じるのが一般的で、仮に連帯保証や担保提供の能力があっても、後継者候補にそれを背負う覚悟がなく、結果として断念してしまうケースも多くあります。
つまり、自社役員・社員への承継は、よほど資産を持った人がいなければ難しいということになります。
また、仮にそのような役員・社員がいたとしても、そもそも、その人に経営能力があるかという問題もあります。部下としては非常に優秀であっても、経営者として同様に優秀とは限りません。
冷静に考えた結果、後継者として任せられないと、事業承継を諦めるケースも多いようです。
③M&A
3つ目は、第三者企業に承継するM&Aです。
子息等の親族や親族外の自社役員・社員への事業承継ができない場合、残る選択肢は、M&Aによる第三者企業への事業承継です。
M&Aによる第三者企業への事業承継では、従業員の雇用や取引との取引関係を維持できるのはもちろん、売り手側と買い手側の双方の資本や人材、ノウハウ、販路を活用して、両者をより大きく発展させることができる可能性もあります。
日本では、まだまだ社外の第三者へ会社を譲ることに抵抗感があり、身内に事業承継できない場合は廃業を選択する経営者も多いようですが、廃業を選択すると、従業員は、働き口を失ってしまい、取引先にも多大な迷惑をかけてしまいます。
また、第三者への事業承継は、廃業と比べて、日本経済にも圧倒的な利益をもたらす引退方法であるため、中小企業庁もM&Aによる事業承継を推進しており、中小企業におけるM&Aの実施件数は年々増加傾向にあります。
5.事業承継で失敗しない為に取るべき5つの行動
事業承継をするのであれば、誰しも失敗したくはないですよね?
では、事業承継で失敗しないために押さえておくべきポイントを3つご紹介していきます。
①早めに着手する
事業承継で失敗しない為に取るべき行動として、早めに着手するがあります。
事業承継には、後継者の選定や後継者の育成や教育、業務の引継ぎなど、実行までに10年程度を要すると言われています。
まずは、経営者として、事業承継に向けた準備の重要性を十分に認識すること、そして、平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえて、60歳頃には事業承継に向けた準備に着手することがポイントです。
「誰に、いつ、どのように」事業承継するかという方針をしっかりと具体的に決め、後継者の確保を含む準備に早めに着手することで、円滑な事業承継の実現が可能となります。
②後継者教育を行う
事業承継を失敗させないためには、後継者教育も不可欠です。
万全の体制でバトンタッチするためにも、十分な後継者教育を実施しましょう。
日々の経営の合間に後継者教育を行うことは面倒な点もあるかもしれません。
しかし、ここで手を抜いてしまうと、事業承継が失敗する可能性が高まるのは明らかです。
自身がこれまでの経営者経験で得たもの全てを教え込む意識で、後継者教育に臨みましょう。
③税金対策をする
事業承継は経営権を委譲するものですから、必ず会社の株式を後継者に引き渡します。そのとき、発生するのが税金の問題です。
事業承継で発生し得る税金には、後継者にかかるものと、現経営者にかかるものがあります。
後継者が課税される可能性があるのは、相続税、または贈与税です。一般の株式を譲渡されたのであれば、これを売却して納税資金に当てられますが、自社の株式を売却することなどできません。
つまり、後継者は納税資金を別途、用意する必要があります。
この納税資金が準備できないため、後継者になるのを断念するケースもあるほどですから、何らかの対策を事前にきちんと練っておくことが必要です。
税理士に節税対策を相談するのもいいですし、特におすすめしたいのは、後継者の贈与税・相続税が猶予・免除になる事業承継税制の活用です。
④遺産トラブルを回避する
経営者死去の場合の事業承継失敗リスクは、大きなものとなります。
したがって、そうならないための回避手段を、経営者が生前のうちにきちんと取っておくことが、最大の成功ポイントになります。
特に、現経営者の財産のほとんどが会社株式で占められていて、複数の法定相続人がいるケースです。
後継者1人に株式全てを相続させると、他の相続人には平等に財産が渡らないことになります。
このようなケースでもめないためにも、他の相続人を納得させられる条件を考え、事業承継への理解を得られるように事前に話し合っておきましょう。
また、経営者が生前に遺言書を残しておくことも1つの手段です。
⑤早めに相談する
事業承継の必要性は分かっていても、初めてのことで何から手を付けていいのか分からないものです。
まずは、顧問の公認会計士・税理士や取引金融機関、公的支援機関など、信頼の置ける相手に相談してみましょう。
会社の将来について、一緒になって考えてくれるはずです。
親族や役員・社員への承継を漠然と考えている場合であれば、親族や後継者候補自身と話をしてみることも重要です。
「継いでくれるはず」という思い込みから生まれる認識の齟齬を早めに解消しておくことで、円滑な実施に繋がります。
また、後継者が未定、あるいは不在であるという場合であれば、弊社をはじめとする民間のM&A仲介会社や各都道府県に設置されている事業引継ぎ支援センターに相談してみましょう。
仮に相談の結果、M&Aによる第三者企業への事業承継を選択すれば、お相手探しは全てご縁です。
良縁を逃さないためにも、早めの相談が大切です。
以上のように、事業承継に取り組んでいくにあたっては、とにかく早めの相談がポイントになるのです。
また、事業承継で成功させたいなら、FYSがおすすめです!
人材育成のプロであるFYSなら、事業承継の進め方に対して、具体的にどのような手順を踏めば成功できるのか、解決することができます。
事業承継、次期幹部育成、管理職育成、部下育成でお悩みの方はぜひ一度相談してみるのをおすすめします!
まとめ
この記事では、事業承継について「事業承継とは?」「事業承継と事業継承の違い」「中小企業の事業承継の現状」「事業承継の種類」「事業承継で失敗しない為に取るべき5つの行動」の観点からわかりやすく解説しました。
事業承継の現状についてきちんと理解して、事業承継に失敗しないようにち密に計画を練った上で行動をしていくことが大切であるとわかりました。
事業承継に成功して、素晴らしい未来を手に入れることができることを祈っています。