社員教育について悩みを抱えている企業も多いことでしょう。
社員教育は難しく、適切に教育できるかどうかで、企業の発展や存続に大きく関わってくるのも事実です。
この記事では、社員教育について皆さんが知りたい情報を徹底解説していきます。
〈目次〉
1.社員教育の目的
2.社員教育の種類
3.社員教育の計画の立て方
4.社員教育の5つの方法
1.社員教育の目的
そもそも社員教育とは、企業が社員に対して業務上で必要な知識やスキルを提供、またはその知識やスキルを得るために必要な機会を提供することです。
みずほ総合研究所によると、労働力人口の減少に歯止めがかかることはなく、2065年には2016年と比較して4割ほど減少するという試算も出ています。
このように労働人口の減少が続く日本において、各社員の生産性を高めることは喫緊の課題ということができ、社員教育の重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
また、社員教育というと研修と認識されている人も少なくありませんが、研修だけが社員教育の手段ではありません。
OJTやOff-JT、SDや企業内大学、1on1や書籍購入補助制度なども社員教育の手段の1つです。
研修のような強制的に企業が受講をさせる社員教育だけでは十分ではなく、いかに自発的に社員が学ぶ環境を与えることができるかが今後の社員教育の鍵になると思われます。
そして、その社員教育を行う目的は主に以下の4つが挙げられます。
①企業理念や方針の浸透
社員教育で、会社の経営理念やビジョンを共有することで、自身が所属する企業に対する理解が深まり、所属意識を高めることに繋がります。
会社の考え方が浸透すれば、会社の一員として顧客や社会に対してどのように接するべきか、自ら考え行動できるようになります。
会社が順調な時には、社員の不満はあまり出てこないものです。
しかし、業績が悪化したり景気が落ち込んだりすることによって、社員が不安や不満を感じるような状況になった際、経営理念・方針の理解進んでいれば、社員の結束力を高めることができるかもしれません。
②スキルアップ
スキルや生産性の向上は社員教育の主目的とも言えます。
この目的を軸にした社員教育への予算投下は、企業の状況が悪化していくと真っ先に削れる傾向にありますが、この判断は誤りである可能性が内閣府の調査では示唆されているのです。
平成30年度経済財政報告(経済財政白書)原案では、「平均的には1人当たり人的資本投資額の1%の増加は、0.6%程度労働生産性を増加させる可能性が示唆される。」と述べられており、社員教育にかける費用を1%増加させることにより、社員の生産性を平均で0.6%向上させることができる可能性があるため、社員教育は企業が成長していく上で必要不可欠な予算投資と言えるのです。
③リスクマネジメント
社員教育を実施する目的の3つ目は、リスクマネジメントで不要な損失を無くすためでもあります。
コンプライアンスの徹底や情報セキュリティーに対する意識を社員教育で浸透させることによって、無意味な損失を減らすことができるのです。
例えば、個人情報の流出は大企業のような体力のある企業であれば持ちこたえることもできますが、中小企業やベンチャー企業など体力のない企業では企業の存続が危ぶまれる事態になることも珍しくありません。
このように、リスクマネジメントは企業の存続にも影響を与えかねない重要な項目であり、それは個人情報の重要性の認識からビジネスマナーの徹底など多岐に渡ります。
ビジネスメールを1つ取ってみても、取引先に与える印象を左右しかねず、様々な角度からリスクマネジメントを実施する必要があるのです。
④法令遵守
社員教育の目的の4つ目は、法令遵守です。
コンプライアンス(法令遵守)という言葉が、広く社会に定着してきています。
コンプライアンスとは、企業がルールや社会的規範を守って行動することです。
例えば、パワーハラスメントなど、加害者側はコンプライアンス違反をしている自覚がなくても、被害者側がハラスメントを受けている、と感じればコンプライアンス違反となります。
労務環境の改善を叫ぶ声や力も大きくなり、企業としてコンプライアンスは重要になっています。
コンプライアンスに関する社員教育を行いトラブルなどを未然に防ぐ、といった目的があります。
2.社員教育の種類
では、社員教育の種類とは一体どのようなものがあるのでしょうか?
①内定者・新入社員研修
入社する前の内定者の段階で行う内定者研修と、入社して間もない段階で行う新入社員研修が、内定者・新入社員の段階での社員教育です。
内定者や新入社員の多くは学生気分から抜け出せていない者も多い上に、ビジネスパーソンとして必要なスキルセットが整っていない場合がほとんどです。
そのため、入社前、もしくは入社直後に社員教育として研修を行い、ビジネスマナーやロジカルシンキング、OAスキルなどといったビジネスパーソンに必要な基礎ビジネススキルを身につけてもらうことが重要です。
②若手社員研修
新入社員研修が部署に本配属された社員は、配属先の部署で実際に仕事をすることになります。
本配属された先の部署ではOJTなどで様々なことを学んでいき、徐々に仕事に慣れてきます。
仕事に慣れてきた段階で、よりスキルアップして成果をあげてもらうために若手社員研修が行われます。
若手社員研修で学ぶ内容は、新入社員研修のような基礎的なものから少しレベルアップした、業務効率化スキルや自立性や主体性を育み、1人でも仕事を完遂できるようにするトレーニングが行われます。
③中堅社員研修
中堅社員になると、部下を持ったり、チームを引っ張る立場になったりと、若手社員からさらに責任が重くなります。
そのため、中堅社員研修では部下の指導法やチームビルディングなどといったことを学びます。
具体的にはファシリテーション研修やコーチング研修、組織運営研修などがあります。
そして、次期管理職となる中堅社員もいるため、マネジメント研修やリーダーシップ研修など、管理職になるための準備も進めていくことが大切です。
このように、社員教育は段階ごとに種類があるのです。
3.社員教育の計画の立て方
社員教育の計画を立てる流れを、以下の5つのステップに分けてご説明します。
①組織の現状を整理して課題を明確にする
まず、社員教育を進めるための最初のステップは、組織の現状を整理して課題を明確にすることです。
社員教育を計画する上で、なんのために教育を行うのか、解決すべき課題を組織全体から抽出することが大切です。
組織の中でも人事、経営、現場などそれぞれの立場によって、抱えている課題は異なります。
自身の立場だけで解決すべき課題を抽出するのではなく、人事、経営、現場のそれぞれにヒアリングして解決すべき課題を明確化するようにしましょう。
②教育の目標を設定する
社員教育を進めるための2つ目のステップは、教育の目的を設定することです。
解決すべき課題が明確になったら、それを基に教育の目標を設定します。
社員教育を実施し、目標とする状態にするためには、どのようなタイミングでどのような内容の教育を実施する必要があるのかが見えてきます。
課題によっては、1回の社員教育では解決できない場合もあります。教育内容によって「何をどこまで達成するのか」を具体的に設定する必要があります。
③教育の実施時期を決定する
社員教育を推進するための3つ目のステップは、教育の実施タイミングを決定することです。
社員教育の目標を決定し、その実現に向け、実施スケジュールを組み立てます。
実施タイミングには、定期的に実施される教育と、新入社員の入社時、昇格や配属などの人事異動、会社で認証を取るため、など他の出来事と連携して実施される教育があります。
それぞれの状況に応じて、期待する効果が得られるように余裕をもって教育の実施時期のスケジュールを設計する必要があります。
④教育実施の方法を決定する
社員教育を進めるための4つ目のステップは、教育実施の方法を決定することです。
教育の実施方法には、大きく分けて実業務の中で学習をしていくOJT(On The Job Training)と業務の現場から離れて学習を行うOFF-JT(Off The Job Training)があります。
また、OFF-JTの中にも対面で行う集合研修とeラーニングによる学習があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
自社の目的に合わせて、より適切な社員教育の方法を選ぶ必要性があるのです。
⑤アフターフォローの実施方法を決定する
社員教育を進めるための5つ目のステップは、アフターフォローの実施方法を決定することです。
エビングハウスの忘却曲線と呼ばれる研究結果では、新しく学んだことはその場限りの知識で終わってしまう傾向があると指摘しています。
つまり、実施した教育内容を定着させるためには定期的なフォローアップが必要だということです。
社員教育の計画の立て方は、これらの流れを意識することで、スムーズに計画が立てられるようになります。
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人材育成のプロであるFYSなら、社員教育に対して、具体的にどのような計画を立てれば成功できるのか、解決することができます。
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4.社員教育の5つの方法
社員教育の方法は様々ありますが、基本的な社員教育の方法として挙げられるものを5つ厳選してご紹介します。
①OJT
社員教育の方法として、OJTは真っ先に挙げられるでしょう。
OJTは多くの企業で社員教育に用いられており、実務を通して必要な知識やスキルを身に着けていくことを言います。
実際に業務を行いながら、実務に必要な知識やスキルを経験を通じて学ぶことができるため、即戦力化しやすいというメリットがある一方で、教育担当となる社員を用意することが難しい企業には適していないというデメリットもあります。
また、教育担当者の知識やスキルだけでなく業務への取り組み方や考え方に、教えられる側の社員が大きく影響される可能性もあり、適任と思われる担当者の選出がOJTを効果的に行うための重要な鍵となるでしょう。
②Off-JT
OFF-JTは職場外研修のことを指し、文字通りに企業外で行われる研修やセミナーに参加し、スキルや知識を習得するという社内教育の方法の1つです。
OFF-JTは社外で実施される集合研修が代表とされていますが、昨今ではウェビナーへの参加など社員が自発的に自分に必要なスキルを習得するためにOFF-JTを実施することも増えてきました。
OJTと異なり、複数の社員を教育できたり、教育の質を均一化しやすいというメリットがある一方で、研修参加者が実務から離れてしまうため実務への影響も少なからずあることは留意しておく必要があるでしょう。
特に営業など、日々の積み上げが業績に大きく関与する部署ではOff-JTで数日間業務から離れることが難しく、なかなか知識やスキルの習得に時間を充てることができないという懸念もあります。
また、外部研修への参加には交通費や宿泊費の支給が必要になることも多く、費用や工数がかかることもデメリットと言えるでしょう。
③eラーニング
eラーニングとは、オンラインで動画を視聴し、知識やスキルを習得する社員教育の方法です。
eラーニングはスマートフォンやパソコンがあれば簡単に受講できるため、時間や場所を選ばず学習ができるというメリットがあります。
OJTのように教育担当を用意する必要もなく、Off-JTのように社員の生産性を落とさずに実施できる社員の教育方法として導入する企業も増えている一方で、各社員のモチベーションに効果が大きく左右されるため、モチベーションを維持させるための施策を別途用意する必要があるでしょう。
例えば、不足しているスキルやさらに伸ばしたほうが良いスキルを1on1や面談で明確にしつつ、各個人でeラーニングで学んでもらい、進捗を定期的に確認するといったやり方でモチベーションを維持するという方法もあります。
④メンター制度
メンター制度とは、新入社員や若年層の社員を、先輩社員が支援する制度のことを言います。
OJTは実務に関する知識やスキルの習得が主目的であるのに対し、メンター制度では、メンティーとメンターが他部署でも問題なく、同じ部署の先輩には普段言えないような悩みや不安を吐露してもらったり、他部署の話も聞き社内全体の業務を把握するという効果があります。
OJTとメンター制度を組み合わせ、社内全体で新入社員の育成をしていくという企業も多くある一方で、人手が足りていない企業の場合は導入することが難しいというデメリットもあります。
⑤コーチング
コーチングとは、上司が部下の目標達成を支援する社員教育の方法です。
命令や指示で部下を強制的に動かすのではなく、対等な関係で問いかけをし、その過程で部下が自ら向かうべき方向を決断することが、コーチングの大きな特徴です。
強制的な指示を行うものではないため、部下の不安や至らない部分を問いかけから感じ取り、改善に向かう行動を促す必要があるため、知識や経験がコーチングをする側には求められます。
また、問いかけによって自らの行動を変容させる必要があるため、時間がかかることも珍しくなく、コーチングを行う社員は工数の確保も考えておく必要性があるでしょう。
その他にも、ストレッチアサインメントやMBO、自己啓発などがありますが、基本的にはこの5つが社員教育の方法としてはメジャーなのです。
まとめ
この記事では、社員教育について、「社員教育の目的」「社員教育の種類」「社員教育の計画の立て方」「社員教育の5つの方法」の観点から徹底解説しました。
社員教育の種類を把握して、きちんと計画を練った上で社員教育を実施していく重要性がわかりました。
社員教育が充実して少しでも企業が発展してくれることを祈っています。